寝たきりの犬の介護で備えること、寝床・排泄・家族の分担を整理
寝たきりの犬の介護では、主治医とケアの方法を決め、体を支える寝床、皮膚と排泄の管理、家族が交代できる体制を整えることが基本です。体位交換や排尿の介助は、病気や体の動かせる範囲に合わせて指導を受け、無理なく続けられる計画にします。
この記事でわかることは、家で準備する物、変化を見つける観察点、介護を引き継ぐときの記録方法です。
- 寝床のクッション性と清潔さを保ち、体位交換と皮膚の観察を組み合わせます。
- 排尿・排便・食事の介助は主治医に教わり、異変があれば介護方法を見直します。
- 実施時刻と犬の様子を引継ぎ票に残し、夜間や担当者不在時の支援まで決めます。
在宅介護を始める前に主治医と決めること

最初に決めたいのは、その犬に必要な介助と、変化が起きたときの連絡先です。寝たきりという状態だけで介護方法を一律に決めず、痛み、呼吸、飲み込み、排泄、動かせる範囲を主治医に評価してもらいましょう。
高齢犬の動きや行動の変化には、痛みが関係することもあります。「年だから仕方ない」と受け止めて終わらせず、触ると嫌がる、落ち着いて休めないなどの様子を伝えてください。短い動画も診察時の情報になります。AAHAの疼痛管理指針でも、家庭での観察と動画の活用が示されています。
診察には、普段介護する人に加え、交代する人も可能なら同席し、次の事項を確認します。
- 楽に休める姿勢、避ける動かし方、体位交換の間隔。
- 排尿できているかの確認方法と、排泄介助が必要かどうか。
- 食事・水分の与え方、薬の使い方、再診や相談の予定。
- 異変が出た場合の連絡先、夜間の受診先、移動時の支え方。
説明を聞いた後、家族が実際にできるかまで確認することが大切です。退院時には、家の寝床の写真を見せて準備を相談する方法もあります。痛みを和らげるケアについても、治療方針と一緒に話し合いましょう。
寝床は体を支え、汚れた部分を替えやすくする

寝床は、十分なクッションがあり、犬の皮膚と敷物を清潔で乾いた状態に保てるものを用意します。寝心地とともに、濡れたときに交換しやすい構成を考えましょう。
体を支えるマットの上に洗えるカバーや吸水用の敷物を重ね、必要に応じて防水カバーを組み合わせます。交換用の敷物を近くに置き、汚れた物を入れる場所も決めておくと、担当が替わっても同じ手順で片づけられます。
寝床を整えた後は、犬を寝かせた状態で体の当たり方を見ます。クッションを追加する必要がないか、体勢が不安定になっていないかを確認し、使うマットや支え方に迷う場合は主治医に相談してください。AAHAの家庭でのシニアケアは、十分なクッション、清潔で乾いた寝具、滑りにくい床を挙げています。
| 準備する物・場所 | 家族で確認すること |
|---|---|
| マットと交換用カバー | 体を支えられるか、汚れたときに交換できるか |
| 吸水シートと柔らかいタオル | 置き場所と補充する人が決まっているか |
| 寝床の周囲の床 | 介助する人の足元が滑らず、移動を妨げる物がないか |
| 清拭用品と洗濯物入れ | 犬に使う用品を主治医に確認したか |
| 記録用紙と連絡先 | 交代する人にもすぐ見つけられるか |
休む場所は、温度や換気を調整でき、落ち着いて過ごせる所を選びます。家族との関わりも犬の状態に合わせて保ち、声をかけたり、そばに座ったりする時間をつくりましょう。AAHAのケア項目では、快適な寝床と家族との交流の両方が重視されています。
室内での関わり方を考える際は、雨の日の犬の過ごし方|室内遊びと運動不足解消のアイデアも関連情報です。寝たきりの犬に取り入れる活動は、主治医と相談して選んでください。
床ずれ予防は体位交換と皮膚の観察を組み合わせる

老犬の床ずれ予防では、同じ場所に圧力がかかり続けないよう体位を変え、皮膚の変化を観察します。体位交換の間隔や姿勢は、その犬の状態に合わせて主治医と決めます。
床ずれは、長く圧迫された部分の血流が悪くなり、皮膚などの組織が傷むことで生じます。肘や腰の骨が出ている部分などは、特に観察したい場所です。クッションを使うことと定期的な体位交換は、Veterinary Specialty Centerの寝たきり動物のケア資料でも予防策として示されています。
体位交換の間隔を家の予定に落とし込む
「昼間は誰が見るか」「夜間は何時に交代するか」まで相談し、指示された間隔を生活の予定に組み込みます。状態が変わったときは、同じ間隔を続けてよいかも確認しましょう。
体位交換は、時刻に加えて変更後の姿勢と犬の反応を記録します。例えば「右側を下にして休んでいる」「姿勢を変えたときに鳴いた」と書くと、次の担当が状況をつかめます。右・左は犬の体を基準に統一してください。
体を持ち上げる方法や支える場所は、実演してもらいます。大きな犬を一人で支えるのが難しい場合も、診察時に伝え、介助人数や補助具を相談しましょう。家庭で続けられない手順は、そのまま抱え込まず計画を調整します。
赤みや湿りを見つけたら記録して相談する
体位を変える機会に、皮膚の赤み、腫れ、ただれ、寝具の湿りを確認します。毛の上からだけではなく、主治医に教わった場所の皮膚も見ましょう。赤い部分や傷を見つけたら、場所と気づいた時刻を残して動物病院へ相談してください。
排泄と食事は「できたか」と「安全にできたか」を見る

老犬の排泄介護では、汚れを取り除くことに加え、尿や便が普段どおり出ているかを確認します。食事も、食べた量と飲み込みの様子を一緒に見て、主治医の指示に沿って介助します。
排尿・排便の記録と清潔を保つ手順
尿や便で汚れた敷物は交換し、皮膚の汚れをやさしく落として、湿ったままにしないようにします。使う洗浄用品は主治医に確認しましょう。おむつを使う場合も、つけたまま安心せず、汚れや皮膚を確認して交換します。使用する時間や方法も相談してください。
尿は「確認した時刻・出方・色」、便は「時刻・硬さ・出しづらそうな様子」を記録します。毎回正確な量を測れなくても、「いつもより少ない」「少量ずつ何度も出る」など、観察できたことを残してください。
シートやおむつが濡れていても、排尿に問題がないとは限りません。尿の通り道が一部ふさがっている場合にも、少量ずつ出ることがあります。出そうとしても出ないときは、直ちに受診が必要です。米国獣医外科専門医協会の尿路閉塞の解説で、これらの兆候が説明されています。
お腹を押して尿を出す「圧迫排尿」は、自己流で始めず、必要性を診断してもらって直接指導を受けてください。Langford Vetsの排尿介助の案内も、獣医師や看護スタッフによる実演と併せて学ぶことを前提にしています。尿の色やにおいの変化、血が混じる様子も相談の対象です。
便が出づらい場合も、食べた量や最後に出た時刻を伝え、対応を相談します。浣腸や薬を自己判断で追加せず、その犬に必要な方法を確認しましょう。
食事や水分を無理に流し込まない
食事の内容と量、回数、支える姿勢は、病気や飲み込む力に合わせて決めます。横になったまま口へ入れる介助は避け、食べられる姿勢を保てない場合は先に動物病院へ相談してください。
むせる、飲み込めない、口から出すときは、口から無理に与えるのをやめて相談します。食べ物が気道へ入ると、誤嚥性肺炎につながるおそれがあります。VCA Animal Hospitalsの栄養管理の解説でも、飲み込まない犬への給餌を続けないよう示されています。体調に不安があるときは動物病院に相談を。食事や水分を十分に取れない場合も、次の診察を待たず連絡しましょう。
体位・皮膚・排泄・担当者を引継ぎ票にまとめる

引継ぎ票には、実施したこと、犬の様子、次に必要なことをまとめます。予定と実施済みを分け、最後に誰が何をしたか分かる形にすると、交代時に確認しやすくなります。
以下は家庭で使う記入案です。時刻やケアの間隔には主治医と決めた内容を入れ、必要な欄だけを使ってください。AAHAの個別ケア計画の指針では、家族が担うケアを明確にし、書面の行動計画や再評価の予定を共有することが示されています。
| 引継ぎ項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 日付、犬の名前、主治医の指示を更新した日 |
| 体位 | 変更した時刻、現在下になっている側、使った支え、変更時の反応 |
| 皮膚・寝床 | 赤みや傷の有無と場所、湿り、敷物を交換した時刻 |
| 排尿 | 確認時刻、自然に出たか、指導された介助をしたか、色や出方 |
| 排便 | 確認時刻、便の状態、いきみなど気づいたこと |
| 食事・水分 | 与えた物、用意した量と実際に取れた量、むせの有無 |
| 薬 | 処方どおりの内容、実際に与えた時刻、飲めたか |
| 担当と次の予定 | 実施者、次の担当者、次に行うケアと予定時刻 |
| 連絡事項 | 変化、病院に伝えた内容、返答、引継ぎの確認者 |
用紙の上部などに、「主治医の連絡先」「夜間の相談先」「受診時に連れていく人」「避ける姿勢や操作」をまとめておくと、日々の記録と一緒に確認できます。指示が変わったら更新日を記し、古い内容と混ざらないようにします。
記入では「排尿確認なし」と「排尿していない」を区別してください。見ていない時間は「未確認」とし、推測を事実として書かないことが大切です。薬も、飲めたか分からない場合はそのまま記録し、追加する前に病院へ確認します。
交代時は用紙を渡すだけで終えず、現在の姿勢、最後の排尿、次に行うことを一緒に確認します。気になる変化は時刻を添えた写真も役立ちますが、急な異変があるときは記録より連絡を優先してください。
家族の分担と外部の支援を先に決めておく

家族の分担は、担当時間、できる介助、代わりに頼める人を具体的に決めます。主な担当者が眠れない、外出できないと感じ始めたら、その負担も主治医へ伝えましょう。
AAHAの介護者の負担に関する指針は、介護には時間や費用、心身の力が必要であり、家族の事情に合う計画や休息の支援が大切だとしています。介護する人が休める時間も、ケア計画の一部として確保します。
分担は、例えば次のように書き出します。
- 朝・日中・夜間に犬の様子を見る担当と、不在時の代わりの人。
- 実演を受けた介助を担当する人と、一緒に支える人。
- 敷物の洗濯、用品の補充、記録の整理を担当する人。
- 病院への相談、通院の移動、費用の確認を担当する人。
全員が同じ介助をできなくても、洗濯や買い物、連絡役などを分けられます。一人暮らしの場合も、家族以外の協力者や、地域で利用できる支援を主治医に相談し、継続できる方法を考えましょう。
外部の預かりや訪問による支援を検討する際は、必要な体位交換、排泄介助、投薬、夜間の見守りに対応できるかを個別に確認します。地域に対応先があるか、犬の状態で利用できるかも含めて相談してください。連絡が取れない場合に誰が受診を判断するかも、依頼前に決めておきます。
預け先の基本的な確認事項は、ペットホテルとは?選び方と準備ガイドも参考になります。寝たきりの犬については、引継ぎ票を見せ、必要な介護を具体的に伝えて受け入れの可否を確認しましょう。
介護計画は、犬の状態と家族の生活に合わせて見直すものです。「今日は楽に休めたか」「介助を嫌がる場面が増えていないか」「担当者が休めているか」を共有し、困った点を次の相談につなげてください。
まとめ
- 主治医と介助の方法、受診の目安、夜間の連絡先を決めてから在宅介護を組み立てます。
- 床ずれ予防は、体を支える寝床、指導に沿った体位交換、皮膚の観察を組み合わせます。
- 排泄の出方と食事の飲み込みを確認し、圧迫排尿などは直接指導を受けます。
- 体位・皮膚・排泄・担当者を引継ぎ票に残し、家族の休息と代わりの支援も準備します。
よくある質問
Q寝たきりの犬の体位は何時間ごとに変えればよいですか?+
自力で動ける範囲や皮膚、呼吸、痛みの状態を踏まえて主治医と決めます。夜間の対応も含めて指導を受け、変更時刻と姿勢、犬の反応を記録してください。
Q床ずれ予防用のマットだけで十分ですか?+
マットに加えて、指導に沿った体位交換と皮膚の観察、清潔で乾いた寝具の管理が必要です。赤みや傷を見つけたら、動物病院に相談してください。
Qおむつが濡れていれば排尿介助は必要ありませんか?+
濡れているだけでは、排尿に問題がないとは判断できません。主治医に排尿状態を確認してもらい、圧迫排尿は必要な場合に直接指導を受けて行ってください。
Q夜間の介護を一人で続けるのが難しいときはどうしますか?+
主治医に犬の状態と家族の負担を伝え、夜間のケア計画や利用できる支援を相談します。交代する人には、最後に行ったケアと次の予定を引継ぎ票で共有してください。
参考にした情報
家庭での環境づくりや個別のケア計画について、以下の獣医療機関・専門団体の情報を参考にしています。
この記事を書いた人
わんわん秘密基地 編集部
群馬県で犬のエンタメ複合施設をつくっているチームが、犬との暮らしに役立つ情報をお届けします。